アニメ「サクラダリセット(SAGRADA RESET)」をまとめて24話まで観ました。
1話を観て何となく、理解したつもりで惰性で2話を観始め、衝撃的な展開になったところで、「あ、これはちゃんと観なあかん奴や!」となりました

ほぼ一気に最終回まで観た結論から言うと、確かに面白いお話でした。

以下、ネタバレが多少含まれます。
特殊な「能力」を持つ人達が暮らす町「咲良田市」を舞台に、主に3人の人物が葛藤しながら、問題に対峙し解決に向けていくというストーリーです。
序盤から中盤にかけて出てくる様々な登場人物や事件は、殆どが終盤にかけての様々な出来事や、解決につながる「ジグソーパズルのピース」のような役割を持っていました。

単なる登場人物の紹介の為のエピソードかと思ったら、それらの持つ能力は、最終的に主人公ケイが行う作戦の為に必要なもので、中々うまく分散させたものだなぁと感心しきりでした。
「あぁ、なるほど、あれはここの為に必要だったのか」
なんてのを感じながら見る事ができる作品です。とても良く構成されていて、原作がそうなのか、かなり緻密な作品であるという印象を持ちました。

ただ、観終わった後、何というのかとても奇妙な感覚に陥りました。

作品としてはとても面白く、登場人物も声優さんの演技も素晴らしく、何が腑におちてないのかが、その時はわかりませんでした。

観終わって時間が経ち、色々と考えるうちに、何となくその違和感がわかってきたような気がします。

考えられることの1点目。
この作品は、小説原作のせいなのか、原作の中身がそうなのかは不明なのですが、基本殆どが会話で進行していきます。
「日中だ」とか「雨が降っている」とか、「海岸にいる」とか「桜が咲いている」とか、そういう目で(絵で)観てわかるような事については一切説明はされていません。ひょっとすると、いわゆる「ナレーション」は存在していないのではなかったかと思います。

説明が必要な情景に関しては、登場人物がセリフで説明しています。(例えば、「街を白い壁が覆っている」など)
そういった会話劇であるため、必然的に会話がとても多くなっています。その辺りが違和感となったのか?とも思いました。
ただ、もっと会話劇であるとも言える、化物語シリーズではこういった違和感は覚えませんでしたので、これが根本原因では無いのでしょう。

2点目として、この作品の進み方が、いわゆるアドベンチャーゲームをやっている感覚に近かったせいかもしれません。
あるゲームのTRUE ENDへ向かう為の、正解ルートを進んでいる感じ。最終的に正しい選択をするために様々な手段(能力)を講じて準備し、リセットして準備した様々なものや出来事を使ってクリアに向かっていくというのが、ゲームをやっている感覚だったんですね。
一見無意味に思われたものが、後から関係してくることや、リセットを見越して(しかもそのリセットを逃れる方法なども駆使して)色々やっているのが、本当にゲームっぽい感じ。
実際のゲームでは、何度もゲームオーバーになったり、思ってもいない方向のエンディングになってしまったりするのですが、この作品は間違えずに正しいエンディングへ突き進んでいきます。
色んな演出などが緻密に計算されたものなんだろうなぁと感心します。
ただ、それは別に見終わった後の違和感とは関係なかった気がします。

3点目として、主人公のケイ、ヒロインの美空と菫、この3人のセリフから、ほぼ感情というものが読み取れなかったという点があります。
他の登場人物に関しては、普通に感情豊かな人からやはり読みづらい人もいますが、この3人は特に感情が読み取れませんでした。
断っておきますが、「棒」だったという事ではありません。ケイ役の石川界人くん、美空役の花澤香菜さん、菫役の悠木碧さん、3人ともがベテランで非常に上手な方々です。感情を込める演技なんて朝飯前なはず。特にあおちゃんなんて、シンフォギアとかでは絶叫しまくりなのに、この作品ではほぼなし。
美空が感情の起伏に乏しいというのは設定の通りなのでしょうけど、後の二人はそうでは無いはずです。

ここまで来てなんとなく自分の感想の正体が解ってきました。

これ、「アニメ」を見終わった後ではなく、「演劇」を観終わった後な感じなんだ…と。

特にこの3人がそうだったのですが、「登場人物がセリフを読んでいる」ような印象だったんですね。しかも、いわゆる体も動かしながら演じるようなものではなく、「朗読劇」に近いもの。絵付きで小説を朗読してもらったような感じと言っても間違いでは無いかもしれません。

3人の表情があまり顔に出ないというのもその一因かもしれません。とは言え実際には、作中で菫は良く笑っていました。しかし、殆どが「作り笑い」でした。自身の感情を押し殺し、表情だけで笑っている状態。ケイも記憶を保ったまま同じ現実を繰り返す。その為、本来の感情が中々表現されません。美空に至っては、そもそも感情の表し方が判らないという状態。
この感情が読み取り難いセリフ回し(話し方)は、こういう内心をも表現した演出だったのだろうと理解しました。

なるほど、だから観終わった後、単純に「あー、おもしろかったー」ではなく、ズシーンと響いたのだろうと思います。

そんなわけで、この作品登場人物は高校生がメインではあるものの、メインターゲットは明らかに大人です。いや、勿論中高生であってもこういう心理的な描写は理解できると思いますが、それを面白いと思えるか?というと、厳しいのではないだろうかと思いました。

「いやー、深いなー」とか「重厚な演出だったなー」とか、そういう切り口で作品を楽しむのって、中々難しいのではないかと思います。

上で例に挙げた化物語を初めとする物語シリーズは、これでもかってくらいの感情がセリフに込められて、作画もそれにマッチして表情豊かに描かれていました。ある意味、直江津市の中に自らが取り込まれたかのような感じでした。
それと比べると、この作品は外から「咲良田市」を傍観していたような印象です。ただ、例えば桜の木のシーンや夕方の海岸のシーンなど、「写真を破る」シーンに関しては引き込まれるような演出でしたから、全てがというわけではありません。でも、おそらくあえてそのような演出だったのではないだろうか?と想像します。その為、観終わった後の感想が、普通にアニメを見終わった後とは違った印象になったのだろうと。
公式サイト(→コチラ)の3人の声優コメントを読んでも、その辺り何となく窺い知る事ができる気がします。

勿論、勝手な解釈ですので、観た人それぞれに受ける印象も異なるとは思います。
一つ言えるのは、すごく良く考えられて、綺麗にまとまった、とても良い作品でしたので、まだ観ていないという方は是非ご覧になってください。
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