競技「アンブレラキャッチ」のルールについて書いてみたい。

競技としては、いたってシンプルで、投げ上げた傘を地上(基本的に…)で受け止め、成否をポイントで評価し、そのポイントの総合で優劣を競うというものである。

単に投げた傘をキャッチするだけであり、一見誰でもできるものに思えるが、落下してくる傘はアンバランスで軌道も安定せず中々難しい。またキャッチした最終形によって獲得できるポイントが変わってくる為、咄嗟の判断や反射神経等が求められ、競技として充分成り立っている。

競技は、投げ上げた競技者自らがキャッチする「シングルキャッチ」と、二人同時に投げ上げ、それぞれがキャッチする「ペアキャッチ」の2種目が用意されている。なお、ペアキャッチは投げ上げた傘を自らが取得するより、ペアがキャッチする、いわゆる「チェンジ」が加点対象となるため、それを採用するチームが多い。

身長などで多少の差はあるものの、概ね身体的な有利不利が無い為、競技に男女区別は無く大会も男女合同で順位を争うのが常である。
元々の由来は曲芸師による和傘の様々な演芸の一つだったものが、徐々に系統化されて競技化していったものである。和傘は重量もあり取り扱いが難しく、それこそ技を鍛え上げた者でなければ取り扱いも難しかったが、比較的取り扱いし易い洋傘の普及により演技者の裾野が広がった。そんな中、傘メーカー大手の帝王傘社が主催した大会が耳目を集め、非常に好評であった事から全国各地で同様の大会が数多く開催されるようになっていった。それら大会への出場を目指した参加者も必然的に増加する事となり、いつしか競技として認知され専門のチーム同士が競うようになっていった。
長くは無い歴史の中では、事故による犠牲者も(失明や最悪死亡に至るケースも)少なくなかったが、安全性を高める為のルールなどが整備され、全国アンブレラキャッチ協会の設立と、統一ルール普及と共に急速に競技人口が拡大した。今では、帝王杯、元旦記念、助六揚巻冠が三大大会として広く認知されて、それぞれの覇者を目指して、全国のチームがしのぎを削っている。

 帝王杯:史上初めての主催大会から続く伝統の競技大会。賞金総額も高く、一番の名誉とされる。今年で64回目。
 元旦記念:大会の冒頭で伝統芸能である傘回し等が披露され非常に人気が高い大会である。演者の「おめでとうございまーす」が開会の合図になるのが伝統。同47回目。
 助六揚巻冠(カップ):珍しく、男女別々で行われる個人大会。それぞれの優勝者は「何代目助六」、「何代目揚巻」と称され、先日初の永世助六(通算5期獲得)が誕生した事で話題となった。同25回目。

三大大会に出場する為の予選もあるが、それとは別にマスターズと呼ばれる大会もいくつか協会が定めている。

競技に使用する傘は、素材、大きさ、長さ、重さなどが厳密に規定されており、競技終了直後に規定違反が無いか審判によるチェックが行われる。また膜に用いられる生地にも基準が設けられている。

当然傘の形状にも規定があり、柄(ハンドル)の部分は筒状のものである事、先端(石突き)は保護の為尖った形状は認められない。柄は方向が判別できるような形状、あるいはデザインのものは認められない。ハジキと呼ばれる軸の突起も大きさ等に規定が設けられており、基本傘の内側から傘の方向を知る事はできないようになっている。骨の先端(露先)にも保護素材を付ける事が義務付けられているが、現在形状や素材などに特段の制約は設けられていない。当然傘全体での規定重量以内である事が求められる。

一方で、傘の色や模様などには一点を除き一切の制約が無い。近年、華やかで奇抜な意匠の傘が多く採用され、その傘が宙を舞う姿が非常に絵になるため、映像美としての人気が高い。デザインが華やかになると、後述の加点要素を得る事が難しくなるため、大会も「目立つ為だけ」に非常に派手な傘を用いるチームと、ポイント重視のシンプルな傘を用いるチームに二分されている。勿論、両立させて「目立って勝つ」のが最良ではあるが、デザイン等は一切加点されないため、純粋に勝ちを追及する為のデザインを採用するチームも少なくない。

傘に企業名を入れる事が認められている為(国際大会など、禁止されるケースもあるが)、スポンサーが付き易い競技でもある。その為、近年プロ化するチームが多く、企業傘下のプロチームも数多く設立されるようになった。一方で、学生なども近隣の商店街などがスポンサーとなり(一部活動費用を負担してくれるなど)、アマチュアながらも傘に広告を入れるチームも少なくない。

また、前述のように身体的差異での優劣がほとんど無い為、大会もアマチュア、プロ合同で行われるケースも少なくない。最近巨額な賞金をかけた大会が開催されるようになり、ますます競技人気が高まっている。

傘にプリントされた広告は、通常ならば放送局などのスポンサーからすると好ましくは無いものだが、競技人気や視聴率の高さなどから、そのまま放送されるのが黙認されている。以前ライバルスポンサーの広告にモザイクをかけて放送された事があったが、全国から苦情が殺到し、放送局の社長自らが謝罪する事態に追い込まれ、その後金銭授受などが発覚するなど、社会全体を巻き込んだ一大事件へと発展した事もあった。以後、傘のプリントはそのまま放送される事となり、あえてライバル企業がスポンサードする大会にチームを送り込み、綺麗に広告が画面に抜かれる事で喝采を得ようとする企業もいる。
駿河高AC部

さて、デザインで「一点を除き」となっている項目だが、これは傘を最終的にキャッチした状態による加点に影響する。傘は8本骨のものが正式採用されているので、コマ(骨と骨の間の膜)も8枚存在するが、その内1枚のみ、明確に他のコマとは異なる事がわかるようにしなければいけないと規定されている。(参照:上図の1枚だけ緑になっているコマ)
最終的に傘をキャッチした際、そのコマ(王駒)を掴んでいるかどうかで加点されるため、区別し易いようにしなければならない。区別さえできれば、色を変えようと、模様を描こうと構わない。デザイン上混同されやすい物に関しては、事前に王駒を申請する義務がある。
膜に用いる生地は規定では裏から(傘の内側から)見ても、表のデザインが見えてはいけない素材を用いる必要がある。最近、これまで数多くのタイトルを獲得してきた大手企業傘下のチームが防護用ゴーグルと生地に細工をし、裏から王駒が判るようになっていた傘を利用している事が発覚し、一大センセーションを引き起こしている。

アンブレラキャッチは、ACP(アンブレラ・キャッチ・ポイント)と呼ばれるポイントで勝敗を決める。
ACPには大きくわけて、次のものがある。
 姿勢P:最終的に傘をどのような姿勢(傘自体)で保持したか
 王駒P:掴んだコマの位置による加点
また、ペアキャッチ時のチェンジ加点がある。近年姿勢Pとは別に、傘を持った競技者の姿勢などに「芸術P」を設けるべきでは?という論争が起きている。20代目揚巻の「鳳 風雅」が帝王杯第60回記念大会決勝最終演技で披露した「順手持ち背面座位」が非常に難易度も高いうえに、その姿勢(と本人)の美しさも相まって、大絶賛を浴びてからの事である。なお、鳳風雅の演技は完璧で加点含め満点であったが、演技前に既にチームの敗北は決定していた中、あえて難易度の高い技に挑戦し成功をおさめた為、その高潔な振る舞いに感銘を受けた者が数多くいた。その為芸術Pを設けてより競技に幅を持たせてはどうかという議論が巻き起こっている。実際に芸術Pを採用した大会もいくつか開催されているが、「何を持って芸術か?」という点がまだ統一されておらず、現時点では三大大会、マスターズ共に正式採用した大会は存在しない。

姿勢Pの評価ポイントは以下の基準となっている。
 5P:同時(1秒以内)にコマと柄を掴む
 3P:コマと柄を掴む
 1P:コマと柄どちらかを掴む
これらは、傘が地面に接地する前に行われるものとし、傘のいずれかが接地した場合には、その時点での保持姿勢が評価対象となる。
同時(1秒以内)というのは、映像担当審判が判断するものとする。1秒以内であればコマと柄のどちらを先に掴んでも構わない。コマは下からでも上からでも、横からであっても掴んでいれば良い。露先を掴んだ状態はコマを掴んだとは認定されないが、持ち直しても構わない。
ちなみに「順手」とはコマを掴んだ際、親指が内側(裏側)にある状態、「逆手」は表側にある状態を指す。
また、柄ではなく骨や軸を掴んだ場合は、やはり1秒以内に柄やコマを保持し直さないと得点は認められない。このあたりの判定も審判がビデオなどを用いて厳密に判定している。

王駒Pは以下の基準となっている。
 5P:王駒を掴んでいる。
 2P:王駒の正反対のコマを掴んでいる。
 1P:それ以外のコマを掴んでいる。

なお、両手でコマを掴んだ場合、その両方が加点されるが、同じコマへの加点は一回のみとする。例えば、王駒と反対側のコマ両方を掴んだ場合は7P加点となるが、王駒を両手で掴んだ場合には5Pのみの加点に留まる。得点としては王駒と柄を同時に掴んだ場合の10点が最高得点となるが、状況により柄ではなくコマを両手で掴んだ方がトータルで高い得点になるケースもあるため、咄嗟の判断で両手でコマを保持する事もある。

ペアキャッチの場合は、それぞれの競技者が上記基準で採点され、二人の合計が得点となる。チェンジ(傘を投げた者と別の者がキャッチ)成功した場合には5Pが加算される事になっている。

また、ペアキャッチではそれぞれが傘をキャッチするのではなく、二人同時に傘二つを保持する、いわゆる「コンバイン」と呼ばれる超大技に挑戦するチームがでてきた。例えば、競技者Aが傘1の柄と傘2のコマを保持し、競技者Bが傘1のコマと傘2の柄を保持するような体勢が最終姿勢になるようなケースである。(一人が柄のみ、もう一方がコマのみというケースも)

当然空中での傘は不安定に落下してくるし、近ければぶつかったりして予測不可能な動きをする為、成功は非常に難易度が高いと言わざるを得ない。しかし、「同時(1秒以内)」というルールを利用し、最終姿勢を作るなど、各チーム工夫を凝らして挑んでいる。ただし、現時点で三大大会、マスターズでの成功例は只1度しかない。(第37回元旦記念準々決勝で、県立駿河高校AC部男女ペアが成功も、チームは敗退)
この時、チェンジポイントについて審判団による長時間の協議が行われた事も有名である。そもそも投げ上げた者が別の傘を保持するからチェンジである為、一方の手はチェンジではあるが、もう一方は不成立という状況が混乱の元となった。10分を越える協議の末、チェンジポイントは認められなかった(認められていたら準決勝進出が成ったのだが)。以降、コンバイン時によるチェンジポイントについては、現在まで論争が続いており、結論がでていない。芸術Pを設けるような声が大きくなっている一因にもなっている。

王駒の設定は、各チーム工夫を凝らしている。
最終的に保持した姿勢がカメラに大写しになる特性上、正しい姿勢で王駒を保持した場合、企業名などが正しい位置で示されるのが理想と言える。その為本来0時方向に王駒を配置するのが多いように思われがちであるが、実際には保持し易さから王駒は6時方向に設定されるケースが多い。
競技者によっては左右から保持した方がやり易い場合もあり、3時、9時方向に設定されるケースもある。20代揚巻の鳳風雅は0時方向、いわゆる天頂王駒の傘を利用する事を好んでいるとされる。

ちなみに、得点はコマか柄を掴んで1秒以内で判定されるが、掴んだ後静止する必要は無い。その為、傘を保持したまま各自思い思いのパフォーマンス(演舞)をする場合が多く、その美麗さ、力強さに魅了されるファンが後を絶たない。鳳風雅の順手持ち背面座位(別名風雅の舞)は、保持すると同時に座った最終姿勢に由る命名である。

王駒を正しく保持し競技者が舞う事で、傘のデザインがもっとも映える瞬間が演出される。競技者と傘のデザイナーの集大成とも言える瞬間である。競技者とは別に専属のデザイナーを雇うチームも多い。部活動などでも美術部や漫研などに依頼するケースがほとんどだが、中には将来の傘デザイナーを目指してチームに参加しているものもいるようだ。

大会は屋内でのみ実施されている。洋傘の重量では風の影響をモロに受けるため当然とも言えるが、元々の和傘を用いた曲芸では屋外で催される事もあり、洋傘を使っていてもハプニングを想定した屋外大会が無いわけではない。概ねそのような大会は地元参加型の和気藹藹とした行事である事が多い。
また、大会ではゴーグルの着用が義務付けられている。本来は目を保護する為のものであるが、最近ではゴーグル型端末を用いて回転方向などを予測表示するようなものを採用するチームもでてきており、先に述べた不正の影響もあり規制を求める声が上がり始めている。

当初、傘は開いた状態で投げ上げていたが、開いた状態の傘を高く上げる事は難しい。そこで閉じた状態で投げ上げ、空中で開かせるようになっていった。しかし想定通りに開かずに高速で落下した傘が、演者に怪我を負わせる事故が相次ぎ一時期規制された。その後石突き形状の規制やゴーグルの着用、開閉システムの改良など様々な要因が重なり、現在では閉じた状態での投げ上げが認められ、主流となっている。中には開いたままで投げ上げて、短時間で満点をたたき出す猛者もいるため、そのあたりの戦術も多彩で見所がある。

チーム戦(団体戦)は、シングル3試合とペア2試合の総合得点で競われる。得点の高さからペア重視とされるが、やはり大将格の演技はチームを代表するに相応しい人物が締める場合がほとんどである。シングルとペアの重複出場は認められるが、シングルに複数出場する事は認められない。ペアについても同一ペアが出場する事は認められていない。3人いればチーム戦への出場は可能だが、シングルとペア掛け持ちのケースは近年減少方向にある。(コンバインの影響が大きいと思われる)


そして、元祖アンブレラキャッチとも言える帝王杯を主催する帝王傘社が、今期より帝王杯に芸術Pを正式採用すると発表し、世間がざわつく中、弱小の県立駿河高校AC部の美人部長と、体格にも恵まれず運動神経も無いが動体視力と反射神経が驚異的なボクを巡る物語が始まろうとしている。

実際に見た夢はここからスタートしてた
どうやら夢の中のボクは、某ハル○キくんみたいな身体をしてて、先輩の美人部長は某黒○姫みたいな感じだった(けど、髪の色は栗色か薄い茶髪って感じ)。スカウトされて傘を掴む所から夢は始まったけど、実際覚えてるのは、色々なデザインをした傘が宙を舞っていたのくらい。
んで、その傘を捕まえて、歌舞伎の見得(みえ)を切ったり、舞ったりするする先輩方と、傘を掴む特訓(?)をしているボクがいた。そして、何かの大会に出場して…ってあたりで目が覚めた

面白いストーリーを考える才能は無いので、せめてこの「アンブレラキャッチ」がどういう競技なのかだけ、固めてみようかなって思ったら思った以上に具体的に考えられてちょっと面白かった

ひょっとすると、続きをまた夢で観るかもしれない